ハンナの足跡
 先輩でもある同僚の神崎は、僕が少し大人しくなったせいか、急に元気を取り戻したらしい。紺野さんに、僕は女に振られたから元気がないんだとか、こそこそと耳打ちしたりしていた。紺野さんは僕を気遣って、いつものように優しかった。紺野さんの優しさはいつも有難い。僕は、神崎の事など、どうでもよいので、放って置いた。うるさいハエは何処にでも飛ぶものだ。汚らわしいハエには触らないのが一番良いと僕は思う。あまりに騒がしいときは、死なない程度に叩くまでのことだ。僕はそうやって今まで生き延びて来たのだから。
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