ハンナの足跡
 アパートへ帰ると、ハンナが居た。僕の城の前に居た。僕は堪らなく嬉しかった。思わず大きな声を出してしまっていた。
「ハンナ!」
 ハンナは驚いて、猫が目を丸くするように、僕を見て、その後、笑って手を振った。僕は、ハンナを女として幸せにする役にはなれない。けれど、僕は彼女を愛していた。母親が子供を愛するように。このとき、僕にとってハンナは大切な存在なのだと実感した。
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