ハンナの足跡
ハンナが久しぶりに会いに来てくれてから、今度は僕も、彼女の住んでいる部屋へ、よく行くようになった。僕は不器用に彼女を愛した。不器用な母親であり、不器用な兄であった。他愛も無い話をし、笑った。誰の目から見ても、僕は彼女に恋焦がれ、通い詰めている男に見えただろう。それでも構わなかった。僕は、彼女の体が目的で会いに行くのではない。体のことなど、どうでもよかった。僕は彼女の心を、魂を愛した。会えばいつも、僕の精神と、彼女の精神は共鳴する。まるで昔から知っている相手のように。だから彼女に会いに行く。