ハンナの足跡
 朋子は具合が悪いというのに、僕にお茶を出したりしてくれた。僕はそんな朋子を、見ていると、ハンナに感じている気持ちとは違う気持ちを抱く。二人で座って、お茶を飲んだ。しばらくして、朋子が僕に聞いた。
「そういえば、あんた警察官なんだって?」
「え?僕が?そうだよ、俺、警官。」
「ハンナから聞いたんだけど、驚いちゃって、あたし。」
「どうして、柄に合わないからか?」
「違うわよ。ハンナの事、外国人だと思わないの?」
「ああ、言われればそうだな。でもあいつ、ちょっと日本人っぽい感じもするよな。」
「別に、こんなこと、黙っててもいいんだろうけど。ハンナは外国から、日本へ働きに来ているわけよ。警察なら、こういう問題にはよく関わるんじゃないの。」
「そんなこと心配してんの。俺はあいつの事、垂れ込んだりしないよ。」
「まあ、ハンナのそういう複雑な問題は、社長がきちんと面倒みてくれてるみたいだから、いいんだけどさ。」
「社長って、店の社長か。」
「そう。社長はさ、ハンナと同じくらいの年の娘を亡くして、そんなときに調度、ハンナを見つけたのよ。まるで自分の娘のように可愛がってるわよ。社長は、皆の事可愛がってくれる人だけどね。あたしは、ああいう人の下で働いてるから、まともで居られるのかもしれないなあ。」
「出来た人間なんだな、ここの社長は。俺の上司も良い人だよ、すごく。」
「あたし達、運がいいわよね。」
「そうだな。」
 二人で笑い合った。
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