ハンナの足跡
 朋子は僕より2つ年下だが、しっかりしていて、話も合う。
「じゃあ、社長がハンナの父親代わりって感じなのかな。」
「そうね、そんな感じね。」
「朋子はハンナの母親代わりみたいだよなあ。」
「そうかなあ。」
「だってお前、面倒見いいだろ。お前にもハンナはよく懐いてるし。」
「ハンナは誰とでも上手くやれる子よ。」
「ほら、もう母親みたいだし。」
「やめてよ、あたしをオバちゃんみたいに言わないで。」
 僕らはまた二人で笑い合った。僕と朋子は笑い合いながら、お互いに目が合った。胸が高鳴るとか、そういう感じはしなかったけれど、朋子から目が離せなくなっていた。朋子も僕と同じように感じていたのだろうか。互いの顔が近付いて、気が付くとキスしていた。軽いキスだったが、する前には感じていなかったのに、僕はキスをした後に、急に胸が高鳴ってしまっていた。朋子も僕も、下を向いて黙ってしまっていた。僕は、ドアが開いている事なんて、すっかり忘れていたので、そのときは気にもしなかったのだが、ふっと誰かが通り過ぎた気がしたので、振り返った。でも、誰も居なかった。
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