ハンナの足跡
 朋子と付き合い始めてから一ヶ月が経つ頃、僕はハンナに何も言わずにこうなってしまったことが気になっていた。ハンナに会って、話がしたかった。何事もなかったように、ハンナの部屋へ行って良いものか、悩んだ。僕からハンナを訪ねてしまうと、ハンナも戸惑ってしまうかもしれないと思い、朋子に頼んでみた。
「いいわよ。ハンナに話しておく。」
 意外とあっさり、僕の要求は了承された。朋子の話では、ハンナの方が朋子に遠慮して、僕に会いに行くのを避けているのだという。朋子は朋子で、僕がハンナに会うのは構わないと言った。二人きりで会うのも構わないとまで言った。何故そんな風に言えるのかと訊ねると、二人の事は知っているし、事情も分かっているので、別におかしな心配をする必要がないからだと言った。もし、万が一、僕とハンナがくっついてしまっても、そのときはそのときで、僕を好きな気持ちは変わらないと言った。朋子は、肝の据わった女だ。僕は朋子のそんなところを知って、益々好きになった。
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