ハンナの足跡
 朋子にハンナのことを頼んだ次の日、早速、ハンナがいつものように僕のアパートの前に居た。僕はハンナに向かって大声で叫んだ。
「ハンナ!」
 ハンナも笑って、僕に手を振った。以前と全く変わらない二人がそこに居た。
「俺、朋子と付き合うことにしたんだよ。」
「知ってるよ。良かったね、お兄ちゃん。」
「なんだ、驚くかと思ったのに。」
「だって、私、見ちゃったもん。」
「見たって何を。」
「お兄ちゃんと朋子のキスシーン!」
「あんとき、ハンナ居たのか、やっぱり!」
「あれ、気が付いてた?」
「なんか気配を感じたんだよ、俺。ハンナだったのか。」
「朋子さん、いい女。お兄ちゃん、幸せ者。」
「そうだよな。俺は幸せ者だよ。」
「可愛い妹も居るしね。」
「そうだよ。俺は誰もが羨む男になってるな、今。」
「朋子さん、盗られないように、がんばれ、お兄ちゃん。」
「盗られるもんかよ。」
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