ハンナの足跡
二人の女から、僕は十分過ぎるほどの幸せを与えられていた。僕は今まで、女性というのは同じ人間でも分かり合えないもので、ある意味、あまり深く係わり合いになりたくない存在だった。僕は女を恐怖している所があった。裏切りや嘘や、この世のあらゆる悪徳と名の付く言葉の裏には、必ず女が存在するような気がしていたから。今までろくな目にあってこなかったせいもある。僕にも原因があったかもしれないが、女の方にも原因があっただろう。この二人の女こそ、本物の「女性」なのだと僕は思った。女の身体をして、男のように勇ましい野心を持った人間の、なんと多いことか。まるで人を騙すために存在しているかのような、女とも男とも付かない人間。いっそ、身体も男の身体にしてしまえばよいのだ。そうすれば、真の男の苦労が分かるはずである。そうしたことを拒みながら、旨いところだけを摘んで生きているような人間は、僕にとっては廃人と同じだ。
ともあれ、この二人の女性を大切に思い、尊重する気持ちは、日に日に僕の中で大きくなっていった。
ともあれ、この二人の女性を大切に思い、尊重する気持ちは、日に日に僕の中で大きくなっていった。