ハンナの足跡
 試合当日、僕ら三人は会場へ向かった。試合の前に控え室を訪れると、ハンナの事がばれてしまうので、試合後に訪ねることにした。
 西島が用意してくれた席へ座った。試合がよく見える席だ。ハンナは試合を見るのなんて初めてで、いつもよりオシャレに気が入っていた。普段、栗色の綺麗な長い髪を下ろしているが、今日はカールをかけてまとめている。細身のパンツがよく似合っていた。まるで華やかな雑誌から出てきた女のようだった。周りの観客も、その美しさに振り向いたり、見入ったりしていた。ハンナはそんなことそっちのけで、無邪気にはしゃぐばかりだった。コウスケのポスターを見ては騒ぎ、パンフレットを見ては騒いでいた。まだ駆け出しの西島に、こんな熱烈なファンが出来て、それだけでも西島にとっては心強いだろう。ハンナをここへ連れて来て良かったと思った。
< 70 / 200 >

この作品をシェア

pagetop