ハンナの足跡
 僕の予想通り、西島の圧勝だった。2RでKO勝ちした。会場は総立ちで西島の勝利を祝福した。華やかで強い男がそこに居た。僕はその光景を見ながら、僕には得る事の出来ないものを手に入れられる男に、拍手を送りながら、嫉妬した。そんな気持ちを読み取ったのか、朋子が僕を突いた。朋子の方を見ると、彼女は真剣な顔で、僕の目を見てきた。僕を心配していたのか、不安そうな顔をしていたので、僕が目で大丈夫と合図すると、にっこり笑った。
「お兄ちゃん、コウスケ、すごいよ!すごい!」
 ハンナは試合前以上に興奮して僕に言った。
「だろう、あいつ、すごい男なんだよ。」
「コウスケ、コウスケ!」
 ハンナはジャンプして西島に手を振った。西島は、リングの上からハンナの様子を、優しい目をして見ていた。
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