ハンナの足跡

　さっきまで、僕の後ろに居たはずのハンナが部屋に居なかった。僕はドアのところまで戻って、ハンナを探した。控え室の入り口の側に、気後れしたようにハンナが居た。
「ハンナ、こんなとこに居たのか。弟が会いたがってるよ。」
「うん。なんだか、私、びっくりしちゃって。」
「大丈夫、大丈夫。おいで。」
　僕はハンナの手を引いて、部屋の中まで連れて行った。
「あれ、すっごい綺麗な子じゃないの。オジサンびっくりだな。」
　高雄さんがハンナを見てそう言った。
「でしょ？本日、一番の美人ですから。」
「お前の知り合いなの？驚いちゃったなあ。」
「俺の妹。」
「なんだよ、それ。お前に妹なんか居ねえだろう。」
「妹みたいに慕ってくれてるって事ですよ。」
「オジサンには、ついていけねえなあ。なんだかよく、わかんねえもん。」
「高雄さんによく分かるように言うと、仲の良い女友達ってことです。な、ハンナ。」
「うん、そう。私、お兄ちゃん、大好き。」