ハンナの足跡
「ハンナ」
「何?コウスケ。」
「…」
「何さっきから、黙ってるの。変な人ね。」
「ハンナ。今日の、勝利の栄光を、君に捧げるよ。」
 僕はそれを見ながら、あんな恥ずかしいセリフを真剣な顔で言える西島は天才だと思った。そして吹き出しそうになってしまった。ボクサーを引退したら、あいつに役者を勧めよう。
「よく、意味がわからないね、コウスケ。お姉さんに、むずかしいこと言ったらいけないよ、まったく。」
 西島はハンナを見て笑った。そして、そっと、ハンナの唇にキスした。
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