ハンナの足跡
「なんだよ、西島、弱気じゃないの。」
「弱気っていうか、ハンナの気持ちを、俺は尊重したいから。もし断られて、ハンナと付き合えなくても、ハンナにとって、何でも話せるような相手になってやりたいんです。」
「そうか。」
 僕は、その言葉を聞いた後、川辺を眺めた。川面にぼんやりと月が映っていた。
「何眺めてんですか、先輩。」
「ん?月だよ、月。」
「先輩、ロマンチストだなあ。」
「そんなんじゃねえよ。今日が満月じゃなくて良かったと思ってさ。」
「何でですか?」
「満月だったら、お前が興奮して狼になっちまうから。」
「俺は狼になんてなりませんよ!特に今日に限っては!」
 いつものように、二人でハイタッチした。
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