ハンナの足跡

　僕はハンナを強く抱きしめて、一緒に泣いてしまっていた。そんな僕を見て、ハンナは僕に訴えた。
「お兄ちゃん、私、恐いの。コウスケの事、好き。でも、本当に好きになってしまったら、仕事、出来なくなってしまう。私が働かないと、家族、生きていけない。」
「…なあ、ハンナ。お前は家族が大事だって、いつも自分のことより、家族を優先してきただろう。もう十分なんじゃないか。もっと、自分の人生のこと、真剣に考えろよ。自分の気持ちを大事にしろよ。俺はね、お前が苦しんでる姿、見たくない。普通の女に戻りたいなんて、そんな言葉、聞いちまったら…。お前が不憫で仕方ないよ。何も出来ずに、お前を助けられない俺なんて、死んじまえばいいのさ！」
　僕は、怒りを感じていた。何処にぶつけたら良いのか分からない怒り。