何度でもキミに初恋を
ぐらっと体が傾いて、俺は我にかえった。


見ると、綾先輩が、俺の腕を引っ張って、後ろから篤史がぐいぐいと俺を押している。


『ちょ、ちょっと、なに!?』

焦る俺を無視して、綾先輩は、
『はい、こちらが一番目のお客さまですね』
というと、俺をすずの横に立たせる。



『撮影の準備をしますので、そのまましばらくお待ちください』


そう言うと、篤史と何か話し出した。



すずは少し困ったような顔をしてうつむいている。


隣ではあのフェミ男と、赤い顔をした女の子が撮影をしている。

『…フェミ、じゃなくて、柚樹先輩と撮らなくていいのか?』

小さい声で聞くと、すずはきょとんとして、
『どうして?』
と聞いてきた。


『どうして、って…』

俺が返事に困っていると、すずが小さい声で、
『柚樹先輩、彼女いるのよね…』
と言ってきた。


すずは、今の発言が周りに聞こえなかったか、キョロキョロしている。


『…彼女?』

『しっ』

人差し指を唇にあてる。


『…それにね、あの人欧米かっ、て感じでしょ』

『……』


おうべいか?


『準備が出来ました。撮りますよー。』


その声に俺たちはカメラを見つめる。



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