何度でもキミに初恋を
『アンタ、柚樹先輩、知らないの?』



ここは放課後のファーストフード店。
私はハンバーガーをかじっている。



『てか、アンタほんとよく食べるわよね。』

『綾ちゃんはおなか空かないの?』

『空かないわよ!さっきお昼食べたとこじゃん』

そういう綾ちゃんはジュースを飲んでいる。



『で…すず、ほんとに柚樹先輩のこと、知らないの?』

『うん。知らない』
綾ちゃんは『はぁ…』とため息をついて、

『あの有名な柚樹先輩を知らない人に初めて会ったわ』

『へぇ?そんなに有名なんだ』

『柚樹先輩っていったら、全校生徒の憧れの的よ。ま、あたしとアンタを除く、だけどね。』




そういえば、
なんか三年生に王子様みたいなかっこいい先輩がいるって聞いた、ような、聞いてない、ような…。



『その様子じゃあ知らないでしょうから、教えて差し上げますけど…』


綾ちゃんは眉を少し上げて続ける。

『あんたの幼なじみ、剣人くんだって、柚樹先輩と同じくらい、女子から人気があるのよ』


『へぇ…』


へぇ…そうなんだ。
人気があるのはなんとなく感じてたけど。




綾ちゃんは
『ほんとにもう…』と言いながら自分の髪をぐちゃぐちゃにする。


綾ちゃんのきれいに巻かれたセミロングの髪が…あーぁ、ボサボサ。


『まったくうといんだから…』



綾ちゃんがブツブツなにかを呟いたけど、私は綾ちゃんの髪が崩れることが気になって聞いてはいなかった。
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