何度でもキミに初恋を
『剣人、今日はすずちゃんとこ行かないの?』


篤史が不思議そうに、後ろをついてくる。


『もう、聞くことがなくなっちゃったから?じゃあさ、今日は微糖と低糖の違いについて聞いてみたら?すずちゃん、なんて答えるかなぁ』


毎日、昼休みにすずに下らない質問をすることが日課になっていた俺は、確かに途方にくれていた。


質問することがなくなったからでは、もちろんない。




朝、単純に好奇心から聞いてきた、すず。
俺をのぞきこむ黒目がちな目がキラキラとしていた。


その瞬間、
ほんとに一瞬なんだけど、すずがかわいく見えて。


は?
は?
は?


すずのくせに…。



なんて思っていたら、しょうもない質問してきやがって。


アイツがなんだか、年上ぶるのが面白いから、頼ってるふりをして、内心、遊んでたのに。


そう、いつも俺はすずで遊んでいたのに。




今朝はなぜか、すずに無性にイライラしてしまった。


なぜイライラしたか、自分でもわからなくて、俺は戸惑っていた。




『今日は…いい』


俺はジュースを買うため学食へ向かう。


後ろからは
『えぇぇ〜、俺はすずちゃんと綾先輩に会いたいんだよぉ。』


大袈裟に叫びながら、篤史がついてくる。


『一人で行け』


『冷たいのねん』


『はぁ…』


ため息をつきながら、学食に入ると、
テーブルに突っ伏して、おいおいと泣いているすずと、その背中をしぶしぶとさすっている綾先輩がいた。


こんな時に…


引き返そうとしたら、篤史が
『あー、すずちゃんに綾先輩!』
とでかい声でずんずん近づいていく。


その声に、顔をあげたすずとばっちり目があってしまった。

綾先輩が、
『助かった!』と言いながら、俺をぐいぐい引っ張って、すずのところへ行く。


『ちょ、なんすか!!俺はジュースを買いに!』


『いいから、ちょっと来てよ!!剣人くん、あの子の保護者でしょ』



『はぁ?なんで俺が…』

『いいから座る!』

俺はしぶしぶ、すずの前の席に座る。





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