何度でもキミに初恋を
そんなわけで、俺は今、机に向かって、すずに数学を教えている。


俺の教室にはもう誰もいなくて、グラウンドからは部活をしている声が聞こえている。



すずは素晴らしくバカだった…。

でも、一生懸命に、何度も何度も、消ゴムで消したり書いたりしながら、方程式を解いている。


時たま、
『うー…』
と小さくうなり声をあげては、
『留年、進級、留年、進級…』と小さな声でブツブツ呟く。



ほんとに、すずは見ていて面白い。
やっぱり、こいつは俺のおもちゃだ。




朝、イライラしたのはなんだったんだろう…


ふと思う。


すず一瞬、ほんとに一瞬、かわいく見えたこと?



いや…なんか違う気がする。


でも、なぜイライラしたのか、結局答えは出なかった。



鉛筆の音が止まって、また小さくうなっているすずのプリントをのぞきこみ、解き方を説明する。


『ほほぅ…』

すずは呟くと、また鉛筆を動かした。



< 36 / 143 >

この作品をシェア

pagetop