何度でもキミに初恋を
そっとドアが開く気配がした。


母さん、買い物行ってくるって行ってなかったっけ?


俺は起き上がるのも面倒で、寝転んだままゆっくり目を開けた。


すると、おずおずと部屋に入ってくるすずが見えた。



なんですずが…?


とりあえず、
寝てるふりをしようと目を閉じる。



すずは、そろそろと足音を立てないようにベッド脇までくると、小さい声で、
『ごめんね』とか『私のせいで』とか言っている。



チッ…
ばれたのか…



お前のせいじゃねーよ。

そう言って、起き上がろうとした時、
ぎゅっとすずが俺の手を握りしめてきた。


なんだか、ここで起きてたことがばれたら、ヤバイ気がした俺は寝たふりを続行する。


すると、すずはもう片方の手のひらを俺の額にそっと乗せてきた。


すずの手はひんやりと冷たくて小さい。


かなり熱はひいてるけど、気持ちいいな…



ずっと寝たふりをしていたかったけど、なんだかすずの視線を感じて、だんだん恥ずかしくなってきた。



少し驚かしてやれ…

そう思って、
『起きてるよ、バカ』


パッと目を開けた。

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