何度でもキミに初恋を
『……と…剣人ってば!』


篤史の声に、俺は振り返る。


『何回も呼んでたのに…剣人くんは、目を開けて寝てたのかな〜?』



『あー、わりぃ』



俺は最近、ぼーっとしている。
それは、自分でも分かってる。

でも、その原因がなんなのか、俺にもよくわからない。


『で、なに?』



『次、体育。更衣室行くぞー』


篤史は丸めたジャージを片手に持って走る真似をする。


夏の日射しがじりじりと暑い。


男子更衣室に入ると、ムワッとした空気とともに、汗や土や埃の匂いがする。


『うわっ、くっせー!!』
篤史は鼻の頭にしわをよせて嫌な顔をしている。


『あー、男子更衣室は嫌だ嫌だ、俺は女子のほうで着替えてこようかなー』


篤史がぼやくと、


『おー、篤史いけいけ、行ってこいよ』

『篤史なら行けるって』

『絶対、バレないって!!』


クラスメイトたちが口々に煽る。


『まじか。行ってこようかな』


俺は、真面目な顔で言う篤史の頭を一発はたいてやる。



『バカ、早く着替えろよ』


いってー、と叫ぶ篤史を無視して、俺はシャツを脱いだ。


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