何度でもキミに初恋を
『ねぇ、あの人、かっこいいね』
『モデルさんかな?』


すれ違う女の子たちが、剣人を見つめながら話す声が聞こえてきた。


剣人は自分のことだとは気付かずに、綾ちゃんたちを探している。


『おっ、剣人!すずちゃん』

紺色の浴衣姿の篤史くんが駆けよってきた。

篤史くんは少し離れて私をまじまじと見ると、
『今日のすずちゃんは、また一段とかわいいね。馬子にも衣装だね!』
と誉めてくれた。


私がにまにましていると、剣人が、
『それ、誉め言葉じゃないから』
という。

ん?
すっごく誉められたと思うんだけど?

てか、剣人は、何も言ってくれないけど、どう思ってるんだろう。


お願いだから、こけしだけはやめてください…。


花火会場に向かう人が増えてきて、私は背伸びして綾ちゃんの姿を探す。


『あ、来たよ!!綾ちゃーん、こっちー!』

人混みをかき分けてきた綾ちゃんは、艶やかな黒の浴衣を着ていて、女の私が見てもうっとりするくらい、綺麗だった。


きっとまた、篤史くんが、『世界一綺麗っす』とか言うだろうな、と思ったのに、篤史くんは何も言わない。


ただ、真っ赤な顔をして綾ちゃんをじっと見ている。


綾ちゃんはそんな篤史くんを見て、
『すずが着ていこうってしつこくてさ。』
とまるで剣人みたいなことを言う。


『な…なんか言いなさいよ、すげー綺麗っす、とかさ』
と綾ちゃんに言われた篤史くんは、
『あ、綾先輩、極道の妻みたいっす!!』
と言って、綾ちゃんに思いきりグーでパンチをされた。


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