何度でもキミに初恋を
『ぷっ、ククク…』

さっきのすずの顔を、写メで撮っときゃ良かった。
てか、動画におさめて、ネットでばらまいたらどうかな。



そんな悪魔みたいなことを考えながら、思いだし笑いをしている俺を見て、



『なぁに?剣人。そんなにすずちゃんのドッキリ、楽しかったの?』

母さんが呆れたような顔で声をかけてくる。



俺は、荷ほどきの手を休めないまま、
『まぁね…。ククク…』
さっきのパクパク顔を思い出して、また笑いを堪えていた。


『ほんとにね、あの子ったら気づかないなんて…大丈夫かしら?昔からちょっとボーっとした子だとは思っていたけどね、たった3年なのにね。気づかないなんて、ほんとに大丈夫かしら?』


キッチンで皿や鍋を片付ける母さんの横で、千秋さんがぷりぷりと怒っている。


『まぁまぁ、千秋。すずちゃんは今、お年頃なんだよ、お年頃。』

『パパはいつもすずに甘いのよねぇ…』


千秋さんとパパ…はすずの両親だ。
篠崎さんのおばちゃんと呼ばれるのを嫌がってた千秋さんに、そう呼びなさいと言われたのはいつだっただろうか…。


きっと…幼稚園のころかな?


ちなみにすずの3つ上の姉ちゃん、まなみさんもうちの母さんを『沙織さん』と呼ぶように、キッチリ教育を受けている。






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