サヨナラまでの距離
サヨナラまでの距離
まるい月の淵を目でたどって舞とふたり、い つもの道を並んで歩く。
ふたりの間の距離は昨日までと何も変わらないのに、そこには昨日とは違う関係になった俺たちがいた。
肌に触れる風はひんやりと冷たくなっていて、もうすっかり秋になったんだなぁ、とぼんやり思う。そういえば暗くなるのも早くなった気がする。
「月、きれいだねぇ」
のんびりとした口調で舞が言う。風に吹かれて、肩から髪の毛がこぼれる。
初めて出逢った高校二年のときは、ショートカットだったのに大学三年になった今では肩よりもだいぶ下まで伸びた舞の髪。
なんとなく眺めて毛先がちょこんとはねていることに気づく。
そういえば今日朝一で「寝坊した!」というメールがきたなと思い出すと、それが寝癖なんだと分かってなんだか可笑しい。
「何ニヤニヤしてんの?」
「いや、なんでもない」
なによー、と拗ねる舞をなだめる。
高校生のときから変わっていない子供っぽい表情にまた笑いそうになるけれど、これ以上機嫌を損ねるわけにはいかないのでこらえた。
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