サヨナラまでの距離
「俺さ、正直言って振られたとき、しょうがないって思ったんだ。たぶんなんとなくだけ ど、心のどこかでこうなるって分かってたん だと思う」
「でも驚かせたよね、ごめん」

そう言う舞に首を横に振って、真っ直ぐに目を見て言う。

「俺、舞のことちゃんと好きだったよ」
「私も同じだよ。研一は私の一番だった」

きっと誰もがそれぞれに誰かを想って苦し んだり嬉しくなったり、泣いたり笑ったりし ているんだと当たり前のことを改めて思う。

誰かにとって一喜一憂させる誰かが自分であ ることはきっととても凄いことで、その誰かがお互いに繋がっていることはきっと奇跡なんじゃないだろうか。


「……………………………」
「……………………………」

十メートルくらい先にある曲がり角を曲がれば、俺と舞はふたつの意味でサヨナラをす る。街頭に照らされた夜道にふたりの足音がやけに大きく響く。

ひとつ、ふたつ。

あと五メートル、一メートル、三十センチ、

そして…

ゼロセンチ。
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