それでもキミをあきらめない


○。


――大変身して、相手を悔しがらせて、復讐してやればいい。


いつかの翔馬の言葉が、

頭の中のゴミ箱に放り込んだはずのセリフが、

耳の奥に張り付いて離れない。




「おはよう」


いつものように窓際の席で参考書を広げていた朝子に声をかけると、彼女は短く返事をしてから目を上げた。


「おはよう奈央。そういえばさっき――」


そのとき突然ドアが開き、朝子の声を掻き消す大音量が室内に響き渡る。


「奈央ちゃあああああん!」


きんと耳が痛くなるその声に、身体がこわばった。

背中を向けているから姿は見えないけれど、その特徴的な声音だけで叫び声の主が誰だか特定できる。

脳裏に、太陽の光を反射した金色の髪がきらめく。


「くそっ、まだ来てねぇのか」


そんな声とともに、星野彗が出て行く気配を確認して、胸をなで下ろした。


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