それでもキミをあきらめない
「ああやって、さっきから5分おきに覗きに来るんだが、奈央を捜してるんじゃないのか」
「違うと思うよ……」
目を逸らしながら、わたしは朝子の隣の自分の席へとカバンを置いた。
大変身なんて、そんなに簡単にできるはずがない。
今日のわたしは以前までと同じ、伊達メガネに三つ編みスタイルだ。
切られてしまった眉毛とスカート丈は元に戻すことができなかったけれど、朝子も星野彗も、そんな些細な変化になんて気がつかない。
「なんでも、学祭で会った運命の彼女を捜しているのだとか」
「運命の彼女……」
頬が引きつってしまった。
メイクを落として髪型と服装を変えたとたん、幽霊みたいに見えなくなる相手を、運命の彼女だなんて……。
星野彗の頭と目の仕組みを不思議に思いながら、わたしはカバンから教科書を取り出して机にしまった。