それでもキミをあきらめない
学年トップのアイドル男子は、休み時間になるたびにわたしたちのクラスに顔を出した。
女子から黄色い悲鳴を浴びせられ、男子に不審がられ、それでもひるむことなく目的の人物を捜しまわる。
「くそ、なんでいねぇんだよ!」
女子の顔をひとりずつ確認するという、ファンの子たちからすれば失神ものの行為にまで及んだけれど、彼は想い人にたどりつけなかった。
ちなみにわたしも顔を覗き込まれたけど、一秒で「違う」と断定された。
2組の教室を飛び出していく金髪の背中を見送りながら、ため息がこぼれる。
メイクの力って本当に凄い。
そして星野彗がいかに女の子の外見しか見ていないかということが、うんざりするくらいよく分かった。
見回せば、教室のあちこちでグループになった女子たちがケータイを見せあったり、お喋りをしたりしている。