それでもキミをあきらめない



またあのときの姿になりたいと、思わなくもないけれど、わたしは学校生活の中で長く殻をかぶりすぎてしまったらしい。

今さら、華やかな自分になんて、なれない。


あれは学園祭のあいだだけ、キリカさんが見せてくれた夢。


男の子から「可愛い」と言われたり、自分を着飾ることで得られる、胸をくすぐるような甘い喜びを、あの時間だけ、わたしに教えてくれたのだ。


それが分かっただけで、わたしにとっては大きな一歩だった。

それに、自分でもよくわからない感情を見つけることもできた。


校舎裏で、星野彗に見つからないようにわたしを隠したときの、高槻くんの顔。

少し怒ったように、ぶっきらぼうな口調で「ここにいて」と言ったときの声。


そんな彼の態度に、一瞬だけ湧き上がったあの黒い感情。


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