それでもキミをあきらめない
「高槻くん、料理、できるの?」
「料理っていうか、チャーハンだけだけど……」
「奈央ちゃんも食べようよ。兄ちゃんのごはん、美味しいよ」
ダイニングテーブルに飛びついて遼くんが満面の笑みを浮かべる。
まるで尻尾を振っているような様子にわたしはあっけにとられた。
とんとんとん、と小気味いい包丁の音が聞こえ始めて、キッチンに立つ高槻くんに目を向ける。
エプロンはせず、長身を少しかがめるようにして手を動かしている。
「す、すごいねお兄ちゃん。わたしなんて野菜を切ることもできないよ」
「兄ちゃんは何でもできるんだよ」
「えーすごい! わたしのお兄ちゃんは……」
なんでもできるどころか、余計なことしかしない。
頬に笑みを浮かべたまま言葉を失っているわたしに、遼くんは嬉しそうに微笑みかけ、
「いいもの見せてあげる」とわたしをリビングの隣の部屋に引っ張った。