それでもキミをあきらめない
小さな指が示した写真には、公園らしき広場で滑り台に上りながらピースをしている遼くんの姿があった。
今よりもほんの少し幼い彼は、高槻くんの少年時代とうりふたつだ。
「遼くんかわいい! この滑り台楽しそうだね! おうちの近く?」
渦巻の形の変わった滑り台を指さすと、遼くんは小さな頭を左右に振る。
「違うよ。ずーっと遠く」
「遠く?」
「去年まで、俺たちN県に住んでたんだよ」
突然響いた低い声に驚いて振り向くと、高槻くんがおたまを持ったまま部屋の入り口に立っていた。
「ていうか遼、恥ずかしいもん勝手に見せんな」
「あ、ご、ごめん」
わたしが手にしていたアルバムを閉じると、高槻くんはなんとなくばつが悪そうに目を逸らした。
「いや、別にいいんだけどさ」
そのままリビングのほうへ戻っていく。
「遼、飯できたから、手洗ってこいよ」