それでもキミをあきらめない
マンションの近くに勤めている彼らのお母さんから、帰ってくるという連絡を受けて、
高槻くんはわたしとともにマンションをあとにした。
遼くんはテレビアニメに夢中で、そのまま一人でお母さんの帰りを待つらしい。
「今日は悪かった……付き合わせて」
日の暮れかけた、薄暗い道を歩きながら、高槻くんはぽつりと言う。
見上げた横顔はまっすぐ前を向いたまま感情を出していないのに、
なぜか高槻くんの心を読み取れるような気がした。
今日1日で、彼のことをたくさん知ることができたからかもしれない。
「ううん。楽しかった。遼くん可愛かったし。わたしのほうこそ、ごちそうになっちゃって」
買い物袋を下げたおばさんや、部活のジャージ姿で帰宅している中学生たちがすれ違っていく。
駅の方から流れてくる人の波と、アスファルトに長く伸びた影。