それでもキミをあきらめない
1日の終わりを感じる時間帯が、なぜかいつも以上に物悲しく感じられる。
高槻くんと過ごした時間が、あまりにも濃かったせいかもしれない。
「弟の面倒見て、料理までするなんて、高槻くん、偉いね」
思ったままを口にすると、彼はちらっとわたしを見下ろして、それから小さく、
まるで恥じ入るみたいに頬を持ち上げた。
笑っているような、悲しんでいるような表情に、わたしははっとする。
「昔は全然ダメだったんだ」
「え……?」
「遼を、可愛いと思えなかった」
放られた声には棘も重みもなく、風化した気持ちの残骸をただ声に載せているだけ、という感じだった。
思いつめた過去の出来事を、高槻くんは、わたしに話そうとしてくれている。