それでもキミをあきらめない
高槻くんの声は、不思議な響きをはらんでいた。
嬉しそうな、悲しそうな、泣きそうな、震えた声。
「約束したから……」
笑顔を消し、噛みしめるようにそう言って、高槻くんは足を止めた。
オレンジ色の空を横断する鉄橋を、電車がガタゴトと音を立てて渡っていく。
「ごめん、本当は家まで送りたいんだけど」
元の無表情に戻った彼が、わずかに眉を下げて、わたしは急いで首を振った。
「ううん。遼くんひとりで待ってるんだし、早く帰ってあげなきゃ」
改札に続く短い階段をスーツや制服を着た人たちが上ったり、下りたり、
みんな短い秋に気づきもせずに忙しく歩を運んでいる。
高槻くんと目が合ったまま、無言の時間が流れた。
彼は見送ってくれている立場なのだから、さよならは、わたしから言うべきなのに。