それでもキミをあきらめない
どうしてだろう。
すごく別れがたい。
かげっていく空と、駅前商店街を行く人の流れと、優しい時間に包まれて、
何故だか胸が締め付けられる。
その感情の正体が分からないまま、わたしは笑顔をつくった。
「それじゃあ」
そう言って、階段をのぼろうとしたとき、高槻くんの表情がかすかに動いた。
「あのさ」
どことなく緊張した顔で、彼は静かにわたしを見下ろした。
「今度の日曜、ふたりで遊びに行かない?」
「え……?」
「デート、しよう」
まっすぐわたしを見つめたままの高槻くんの瞳に、夕日のオレンジが静かに光っていた。