それでもキミをあきらめない
「なにい! デートだと!?」
叫ぶやいなや、兄はわたしの部屋のクローゼットをものすごい勢いで開いた。
「見事にだせえ服ばっかじゃねえか! どれ着ていくつもりだお前!」
「ま、まだ決めてないよ。ていうか、勝手に開けないでよ」
わたしが駆け寄ると、翔馬は苦々しい顔で振り返った。
「なに悠長なこと言ってんだよ、デートって明日なんだろ」
「う、うん」
男の子とふたりで出かけたことがないからって、翔馬に相談したのは失敗だったかもしれない。
オブラートという存在を知らない兄のずけずけした口調に、わたしはいきなり心をくじかれている。
「デートって、例の罰ゲーム男なわけだろ」
高槻くんの顔が思い浮かんで、わたしは黙ってうなずいた。