それでもキミをあきらめない



そうだった。

無防備な彼を目の当たりにしたせいで、ときどき忘れそうになる。


高槻くんにとっては罰ゲーム。


でも……本当に罰ゲームなのかな。


高槻くんがわたしを騙しているようには見えなくて。

素の自分を見せてくれる彼のことを、わたしは、前以上に気にしている。


「よし、今から買い物いくぞ」


翔馬の声に、わたしは窓の外を見た。


土曜日の午後3時。

日がずいぶん短くなったから、今はまだ青く輝いている空も、もうすぐ暗くなり始める。


「今からって……」

「いいからほら、早く支度しろ」


シャツにジーンズという簡単な格好でもどことなく垢抜けている翔馬は、

わたしのクローゼットを引っ掻き回し、買い物に行くための服装を見繕った。


< 152 / 298 >

この作品をシェア

pagetop