それでもキミをあきらめない



無言のまま、彼の横を通り過ぎようとしたとき、伸びてきた大きな手に腕を取られた。


「離して」


わたしは地面に目を向けたまま、彼の手から逃れるために腕をひねった。

それでも高槻くんの手は離れない。


「小塚、こっち向けよ」

「離して」

「いいから、俺のほうを――」

「高槻くんの顔なんて、見たくない!」


叫んでから、はっとした。


いくらなんでも、今のは、すごく感じが悪い。


それでも、高槻くんの顔を見るのは怖くて、目を上げられない。


と――、


「何度も目が合った」

「え……?」


低く落ちた言葉に、つい振り返りそうになる。



< 223 / 298 >

この作品をシェア

pagetop