それでもキミをあきらめない




――許せない。



「好きだった、高槻くんのこと」


土砂降りの雨に打たれた紙切れのように、

もろく、柔らかく、わたしの心はちぎれていく。



一瞬、ほっとしたような表情を見せた彼が、わたしの言葉で凍りつく。



「でも、もう、嫌いになった」




甘いシロップみたいだった復讐の言葉は、どういうわけか今はすごく苦くて。


胸が焼け焦げてしまいそう。



「だからもう……わたしの前に、現れないで」



高槻くんの腕を今度こそ振りきって、

全身を軋ませる痛みに耐えながら、自宅に帰ろうとしたとき、

門の手前で身動きが取れなくなった。


持っていたカバンがアスファルトに落ちる。


ふわりと漂う香りと、背中から伝わるぬくもり。




< 225 / 298 >

この作品をシェア

pagetop