それでもキミをあきらめない
「な……」
後ろから抱きしめられて、言葉を失った。
高槻くんの匂いが、わたしの全身を包む。
前に回された腕に、ぎゅっ身体を固定されて、身をよじることもできない。
むしろ振り払う余裕もなく、わたしは硬直した。
なに?
なんで――
わたしの髪に、高槻くんが顔を埋めているのが分かる。
「はな、して」
声を震わせると、彼は首を振った。
「いやだ」
ひび割れた声は切羽詰っていて、わたしの胸を締め付ける。
なんで――?