それでもキミをあきらめない
「何がいけない?」
真っ黒なボブ頭をさらりと揺らして、毒キノコな彼女が席を立った。
「奈央はあなたたちのように、美しくあろうと努力しているだけじゃないか」
参考書を机に置きっぱなしにして、彼女は中央の派手女子たちに近づいていった。
普段ほとんど口を利かない学年1の才女の行動に、クラス中がかたずをのんでいる。
派手女子たちは、彼女の迫力に完全に気圧されていた。
「スタートが遅かったからといって、奈央が笑われる道理はないと思うが?」
「な、なによ、奥田さんには、関係ないでしょ」
クラスで一番発言力のある女子が、果敢にも朝子に食って掛かる。
それでも、学年トップは、ピンと伸びた背筋を丸めない。
「関係はある」
はっきりと通る声で、朝子は言い放つ。