それでもキミをあきらめない
「おい奈央、飯食えよ。母さんが心配する」
翔馬の声に、あわててメモ帳を引き出しに隠す。
涙をぬぐうのと、ドアが開かれるのが同時だった。
「おまえまた閉じこもる気じゃないだろうな」
また。
閉じこもる気。
ドアに寄りかかってあきれたような顔をする兄を、わたしはにらみつけた。
「そんなつもり、ない」
「じゃあどうしたってんだよ。言ってみろ。さもないと」
言いながら棚に近づいて、洋服を着たクマをひとつ手に取る。
「ここにあるぬいぐるみ、ひとつずつ首もいでくぞ」
「ぎゃーやめて!」
椅子から立ち上がるわたしを見て、翔馬は馬鹿にしたように笑った。
「しっかしファンシーな部屋だなおい」
ずらりと並んだクマを手にとっては、ためつすがめつ眺めている。
わたしは気が気じゃなかった。
「いじめられっ子とか不登校児っつうのはもっとこう暗い部屋で……ん? このクマ、服のあいだに何か」
「あ、待っ」
クマの背中に差し込んであったメモの切れ端に気づき、兄はそれを広げた。