それでもキミをあきらめない
教室に入ると、朝子は相変わらず窓側の席で参考書をめくっていた。
「おはよう」と声をかけると、
いつものようにすました猫のような目をわたしに向ける。
「おはよう奈央」
彼女が今日読んでいるのは、新品の参考書らしい。
同じ授業を受けているはずなのに、視界に入った文字がわたしにはただの記号にしか見えない。
「それ、新しい参考書? 前のやつ分厚かったのに、もう読んじゃったの?」
カバンの中身を机にしまいながら話しかけると、朝子は手元を見たまま答える。
「ああ。これは2年の内容で……、あ、そうそう、この本、実は」
朝子がめずらしくわたしを振り返ったとき、
背後でぴしゃーん! と教室の扉が音を立てて開いた。
「奈央ちゃあああん!」
耳をつんざく叫び声に振り向くと、金髪のアイドル男子が駆け寄ってくる。