それでもキミをあきらめない


「フク……シュウ?」
 

言葉の意味が、とっさに理解できなかった。

頭の中で変換できる漢字は『復習』だけ。


「意味、わかんない」
 

つぶやくと、翔馬は部屋の真ん中で得意そうに腕を組む。


「大変身して、相手を悔しがらせてやれよ。俺の妹なんだから、お前だって素材はいいはずだし」

「変身て言われても」
 

思い浮かぶのは悪の組織と闘うヒロインだ。

ふつうの女子高生が世界を救うためにスーパー戦士に大変身。


「なんか違う方向に想像してんだろ」
 

伸びてきた大きな手に、わしっと頭をつかまれた。


「とりあえずこのだっさい髪型と、だっさい制服をなんとかするぞ。あとメガネな。お前裸眼で十分見えてんだろ」

「な、なに勝手なこと言って」
 

振り払うと、内緒話をするように顔を寄せてくる。


「奈央がすっげー可愛くなれば、そいつ絶対『惜しいことした』って後悔するぞ。これ以上の復讐はねえだろ」

「でも可愛くなんて、なれるわけない」

「俺にまかしとけって」
 

ばちんと片目をつぶり、翔馬はドアまで引き返す。


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