それでもキミをあきらめない
「お兄ちゃん、コーヒーは?」
「いらん」
振り返りもせず、廊下を走っていく。
わたしが高校に入るのと同じタイミングで大学生になった翔馬は、中学のときにずいぶん荒れていた。
といってもヤンキーの仲間に入っていたとかじゃなくて、むしろ普段は優秀でおとなしい生徒だったという。
それが、なんの前触れもなく突然キレるのだ。
授業中にいきなり立ち上がって教師に罵声を浴びせたり、家の中で突然キレて窓ガラスを割ったり、一度だけ道ばたで小学生を殴ったこともある。
ふだんの態度からは予想もできない行動に、両親は怒り、戸惑った。
そして小学生で今より頭が悪かったわたしは、無鉄砲にも兄に反発した。
でも、当然ながら敵わなかった。