それでもキミをあきらめない
家の前に、制服を着た彼が立っている。
セットした黒くつやのある髪に、はっきりとした二重のまぶた。すこしだけ面長の顔が無表情なまま、わたしを見つめる。
「はよ」
当たり前のように放られた言葉に、返事もできなかった。
胸の奥がぎゅっと締まって痛い。
「高槻……くん」
どうして? と口にした声がかすれる。
「昨日、迎えに来るって、約束したろ」
抑揚のすくない彼の声に、一瞬、時が止まった。
たしかに告白されたときに「明日迎えに行く」と聞いた。
でも告白自体が罰ゲームだったのだから、そんな約束、果たされるはずがないと思っていたのに。
硬直していると、翔馬がわたしの肩をつかんで家の中へ引っぱりこんだ。
「ほら奈央、さっさと支度しろよ。わりいけど、ちょっと待っててやってくれるー?」
高槻くんに愛想よく言い、玄関を閉める。