それでもキミをあきらめない
○。
すべての色をのみこんでしまうような漆黒の髪は、両サイドできつく三つ編みにし、
スカートは膝が隠れるくらいの長さで、シャツのボタンは首までぴっちり留めている。
生徒手帳のうしろに載ってる『正しい制服の着方』を、誰よりも忠実に再現している生徒は、きっとわたししかいない。
おまけにメガネまで装着していれば、
男子たちから「地味ブス」とこっそりあだ名を付けられても、
女子たちから「暗くてなんか不気味」と陰口をたたかれても、やむを得ない。
それでもわたし、小塚奈央は、入学以来続けているこのスタイルを崩すつもりはない。
「奈央は高校生活、捨ててるから」
「そう、高槻くんだけ見つめてられれば、わたしは道ばたの雑草でかまわな――」
言いかけて、となりの窓際の席をにらんだ。
「別に捨ててるわけじゃないし」
真っ黒な毒きのこみたいなボブ頭を微動だにせず、さっきからずっと参考書に目を落としてる彼女は、
わたしの唯一の話し相手である奥田朝子だ。