それでもキミをあきらめない



「おいなんだよあのイケメン。彼氏? うっわ奈央のくせに生意気な」

「ちがう!」


夕べ話した復讐のことなんか頭から抜け落ちてるらしく、翔馬は追い立てるようにわたしの背をたたいた。


「ほら、早く着替えてこいよ。一緒に登校とか甘酸っぱいなこのやろう」

「だから、そういうんじゃ」

「つか、あいつどっかで見たこと――うわやべ、俺が遅刻する」
 

ひとりでしゃべって腕時計に目を落とすと、翔馬はあわてたように玄関から飛び出した。
 

扉の隙間からのぞいた空の下に、さっきと変わらない姿勢で高槻くんが立っている。
 
夢でも幻でもない。
 

じゃあ、いったい、あれは何?
 

制服に着替えるために自室に戻りながら、彼のまっすぐな視線を追い払うように、頭を振った。


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