それでもキミをあきらめない
わたしに及ぶ勢いで正しく制服を身につけているけれど、
埋もれた存在どころか、一学年にその名をとどろかせている。
朝子はビリから数えたほうが早いわたしと違って、定期テストで毎回一位を飾る才女なのだ。
ちなみに男子たちが彼女につけたあだ名は「勉強のできる地味女」だ。
「ブス」とつかないあたりに、学年トップへの敬意があらわれている。
「休み時間まで勉強するなんて、アタマ痛くならない?」
わたしが聞いても、朝子は答えることすらしない。
まるで呼吸をするように、難しい言葉や公式を次々とのみこんでいく。
辞書みたいに分厚い参考書のページが、窓から入り込んだ風でぱらりとめくれる。
視線を上げた朝子が「お」とつまらなさそうに声を上げた。
「高槻礼央」