それでもキミをあきらめない
大丈夫。わたしは自覚してる。
わたしは身の丈に合わないことはしない。
このパスタを売ってしまったら、それでもう、おしまい。
自分に言い聞かせて校舎に戻ろうとしたときだった。
「よぉ奈央!」
声をかけられて振り向いたわたしは、目を瞠った。
「探す手間はぶけたぜ」
白い歯を見せて、兄の翔馬が敷地に入ってくる。
「な、何しに来たの」
後ずさりをしながら、兄の後ろにきれいな女の人が立っているのに気付いた。
「ちょっとデートしにな」
美人な彼女に目配せをしたと思ったら、翔馬はわたしの正面に立ちはだかった。
「さーて奈央ちゃん。シンデレラタイムですよぉ」
「え、な、なに」
にやにやと笑みを浮かべながら、兄とその彼女はパスタでふさがったわたしの腕をつかんだ。