それでもキミをあきらめない
「正体?」
「俺ってさぁ、大学じゃ完璧に王子様なわけよ。優しくて、成績もよくて、笑顔を絶やさず、どこから見てもイケメンで」
「究極のナルシストよね」
間髪いれずに鋭いツッコミを入れて、キリカさんはヘアブラシを手に取る。
「髪、おろしちゃうよ」
「え」
抵抗する間もなく髪ゴムを外されて、きつくしめていた三つ編みがゆるゆるとほどけていく。
ブラシで軽く梳いてから、キリカさんは大ぶりのメイクボックスを引き寄せた。
「しっかし、翔馬にこんな妹がいたとはねぇ」
「な? 信じらんねえくらい地味だろ? 見てて気が滅入るっつーかなんつーか」
「自分だって大学デビューのくせに」
容赦なく切り込まれて、翔馬は「うるせー」とたじろぐ。